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自動売買の事件簿
完全まとめ

動画で取り上げた事件を、
公的な資料をもとに1冊に

8件収録新しい回が出るたびに追加すべて出典つき

最終更新 2026年11月02日

自動で動く仕組みは、速く、止まりにくい。だからこそ「何が起きたのか」「どこで止められたのか」を知っておくことが、いちばんの備えになります。
各事件を数字・流れ・学べることの順に、数分で読めるようにまとめました。
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収録している事件(一覧)

No.年事件数字で見ると
#0012012ナイト・キャピタル事件(2012)
#0022015スイスフランショック(2015)33億円の穴何が起きた?
#00320181日で92%下落1日で92%下落何が起きた?
#00420102010年フラッシュクラッシュダウ998ドル安何が起きた?
#00520242024年8月5日 日経平均の史上最大の下げ4,451円安何が起きた?
#0062025SNS型投資詐欺(2025)1,288億円何が起きた?
#0072018VIXショック(2018)84%消えた何が起きた?
#0082019円のフラッシュクラッシュ(2019)豪ドル円約7%安何が起きた?
事件簿 #001世界の事件・人物2012

45分で約360億円が消えた──ナイト・キャピタル事件(2012)

2012年8月1日、米国の大手証券会社ナイト・キャピタルは、取引開始からわずか45分で約4億6000万ドル(当時のレートで約360億円)を失いました。

原因は、8台のうち1台のサーバーへの入れ忘れと、9年前に使うのをやめた古いプログラム。SECの命令書をもとに、その45分をたどります。

この事件でわかること

  • ナイト・キャピタルと注文を自動で送る仕組み「SMARS」
  • 使われなくなった「Power Peg」と、1台だけの入れ忘れ
  • 市場が開く前の97通のメール
  • 45分間に起きたこと(400万回超の約定、154銘柄、3億9700万株超)
  • 損失・株価・4億ドルの出資と、その後
  • SECの命令(制裁金1200万ドル)と指摘された5つの問題
  • その後のルールの動き(レギュレーションSCI)
  • 個人が学べること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 自動で動くものは、間違いも、自動で、速く広がります。ナイトでは、212件の注文が、45分で400万回以上の取引になりました。 人なら途中で手が止まることも、機械は止まりません。
  2. 止める仕組みを、先に決めておくこと。どこまで損をしたら止めるのか。何回まで注文したら止めるのか。 動かす前に決めておかないと、いざというときに間に合いません。
  3. 使っていない設定やルールを、残したままにしないこと。ナイトでは、9年前の機能が、たった1つの旗で目を覚ましました。忘れたものほど、思わぬ時に動き出します。
  4. 何かを変えたら、もう一度確かめること。自分だけでなく、もう1つの目で見ること。8台のうちの1台。その入れ忘れは、もう1人が見ていれば、防げたかもしれません。
  5. おかしなサインを、見過ごさないこと。市場が開く前に届いていた、97通のメール。 いつもと違うお知らせが来たら、一度立ち止まる。それだけで、結果は変わったかもしれません。

自動化は、速い。だからこそ、止める仕組みが必要になる。これが、ナイト・キャピタル事件が残した記録です。

出典(主なもの)
事件簿 #002個人向け自動売買の流れ2015

ロスカットが間に合わず33億円──スイスフランショック(2015)、1つの発表で何が起きたか

2015年1月15日、日本時間の午後6時30分。スイス国立銀行が「1ユーロ=1.20フラン」の下限をやめると発表し、ユーロ/フランは一時0.8517まで約29%下落しました。

ロスカットは間に合わず、国内のFX口座には33億8,800万円(1,229件、速報値)の未収金が残りました。公的な記録と開示書類をもとに、その日をたどります。

この事件でわかること

  • 1.20フランの下限と、その撤廃
  • ロスカットと「未収金」のしくみ
  • 海外の業者への広がり
  • その後のルールと、個人が学べること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 自動で止める仕組みは、相場がつながって動くことを前提にしています。値段が飛ぶと、決めた水準では止まりません。 ロスカットも、自分で決めた損切りの注文も、同じです。設定した値段は、約束された値段ではありません。
  2. 損失は、預けたお金を超えることがある、と知っておくこと。超えた分がどうなるのかは、国や業者、取引の種類によって決まりが違います。 使う前に、契約やルールの説明を、自分の目で読んでおくことです。
  3. 「断固として守る」と言われた線も、変わることがある。中央銀行が、断固として守ると書いた28日後に、その線はなくなりました。 どんな前提も、いつか崩れるかもしれない、と考えておくことです。
  4. 自動の仕組みは、自分が画面を見ていない時間にも動いている。発表は、日本の夕方6時半でした。帰りの電車の中で、何が起きたかを知った人もいたはずです。
  5. 一度に動かす金額を、最悪の場合でも耐えられる大きさにしておくこと。業者に求められたストレステストと同じように、もし一気に3割動いたら、と一度計算してみる。 それだけで、見え方は変わるかもしれません。

止める仕組みは、あった。でも、止まらない時がある。これが、スイスフランショックが残した記録です。

▶ この事件の動画を見る

出典(主なもの)
事件簿 #003詐欺・トラブル事件簿2018

「ボットで月40%」の正体──1日で92%下落、2018年の暗号資産事件

2018年1月16日、「自動売買ボットで月40%」をうたっていた暗号資産の貸し出しプログラム(BitConnect)が閉鎖を発表し、そのコインのサイト上の値段は92%下がりました(SEC 訴状)。

SEC によると集めたのは32万5,000ビットコイン超・約20億ドル。米司法省は創設者の起訴で約24億ドルの詐欺としています。SEC の訴状・司法省の発表・州の命令をもとに、その流れをたどります。

この事件でわかること

  • 「月40%」の貸し出しプログラムのしくみ
  • 見せられなかったボットと、紹介料・動画の宣伝
  • 州の当局の停止命令と、1月16日の閉鎖
  • お金の行き先、裁判、私たちが学べること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 中身を見せない自動売買には、立ち止まること。ノースカロライナ州が書いたとおり、秘密の取引システムで、その存在の証拠すらないものは、確かめようがありません。
  2. マイナスの日がない実績は、安心の材料ではなく、確かめるきっかけにすること。本物の相場には、下がる日があります。 毎日プラスの数字は、運用の結果ではなく、画面に書かれた数字だったのかもしれません。
  3. 誘うと紹介料が入るしくみと、すぐには引き出せない元本。お金が入ってくる道は太く、出ていく道は細い。新しいお金で先の人に払うしくみは、その形でしか続けられません。
  4. 体験談の動画は、宣伝かもしれないと考えること。この事件では、動画を出した人たちに紹介料が入っていました。 そして控訴裁判所は、動画での呼びかけも勧誘になりうる、と判断しています。
  5. は、終わったあとのことです。「お金が戻る」という連絡が来たら、まず、公的な窓口で確かめること。これは、海の向こうだけの話ではありません。 日本の国民生活センターも、2024年1月、暗号資産の自動売買ソフトをめぐる相談の例を公表しています。

これが、「ボットで月40%」の事件が残した記録です。

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出典(主なもの)
事件簿 #004世界の事件・人物2010

価格を見ない売り注文、20分で約3,800億円──2010年フラッシュクラッシュ、ダウ一時998ドル安

2010年5月6日午後2時32分(米国東部時間)、米国の大手運用会社の自動の売り注文が S&P500 先物(E-mini)7万5,000枚・約41億ドル(当時のレートで約3,800億円)を約20分で売り切り、ダウ平均は取引時間中に一時998.5ドル下げました。

その売りの決まりは「直前1分の出来高の9%」で、値段も時間も見ないものでした(SEC・CFTC 共同報告書)。止めたのは取引所の5秒の停止。報告書・SEC の発表をもとに、その36分と、その後に変わった市場のルールをたどります。

この事件でわかること

  • 朝から不安が広がっていた市場と、薄くなっていた板
  • 「出来高の9%」で値段を見ない売りのプログラム
  • 14秒の「ホットポテト」と、5秒の停止
  • 1セントと10万ドルの取引、2万件超の取り消し
  • その後に変わったルールと、私たちが学べること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 取引の量は、安全のしるしにはならないこと。報告書は、出来高を流動性の目安にするのは危ういと書いています。 この日、量を膨らませていたのは、受け止める人ではなく、渡し合う人たちでした。
  2. 自動のしくみには、「やめる条件」を入れておくこと。機械は、与えられた決まりのとおりに動きます。値段を見ない決まりなら、値段がいくらでも売り続けます。 止まる条件は、人が先に書いておくしかありません。
  3. 損失を止めるための注文にも、「いくらまでなら売るか」の下限を考えておくこと。報告書は、個人の損切りの注文を含む売りが、買い手の減った板に当たって値段を押し下げたこと、そして成行の売りが、ほかに注文のない板で1セントのような値段で約定したことを書いています。
  4. 急な値動きのとき、自分の注文がどう扱われるかを、ふだんから確かめておくこと。取り消しの基準は60%でした。それより小さな下げで成立した取引は、取り消しの対象ではありませんでした。 取り消してもらえるとは限らないのです。

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出典(主なもの)
事件簿 #005個人向け自動売買の流れ2024

4,451円安──2024年8月5日 日経平均の史上最大の下げ、1つの利上げで何が起きたか

2024年8月5日、日経平均株価は1日で4,451円28銭(12.4%)下がり、3万1,458円42銭で取引を終えました。下げ幅は史上最大、下落率は1987年10月20日に次ぐ史上2番目です。

日本銀行の利上げ(7月31日)と米国の弱い雇用統計(8月2日)をきっかけに、円キャリートレードの巻き戻し・信用取引の追証・FXのロスカット・値動きについていくプログラムが同じ向きに動きました。日経・BIS・日本銀行・金融庁の資料でたどります。

この事件でわかること

  • 円キャリートレード(BISの目安で約40兆円)と、信用取引・FX
  • この日に動いた4つの「自動の売り」
  • 7月31日の利上げと8月2日の米雇用統計
  • 8月5日のサーキットブレーカーと、薄くなった板
  • 翌日の史上最大の上げと、私たちが学べること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 信用取引やFXを使うなら、自分の取引に「自動で決済される条件」があることを知り、その条件を、前もって確かめておくことです。たとえば、自分の口座の画面で、維持率がどこに表示されているかを、一度見ておく。 それだけでも、急な日に慌てずにすみます。
  2. その条件に、急な下げのときに、どれくらいで届くのかを、数字で見ておくことです。たとえば、1日で12%下がったら、自分の口座はどうなるか。 計算はかんたんです。持っている金額に下落率をかけて、それが担保の何割になるかを見ます。
  3. 追証が出たときに、入れられるお金が本当にあるのか、それとも決済を受け入れるのかを、慌てていないときに決めておくことです。追証のためのお金は、生活のためのお金とは分けて考えることです。 生活のお金まで入れてしまうと、次の下げで、生活そのものが揺らぎます。
  4. 「史上最大」などの言葉を見たら、それが幅なのか、率なのかを確かめることです。怖い言葉を見たときほど、一度、数字の物差しを確かめる。 それが、自動で動く決まりに、自分まで流されないためのコツです。

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出典(主なもの)
事件簿 #006詐欺・トラブル事件簿2025

1,288億円──SNS型投資詐欺(2025)、1つの広告とメッセージで何が起きたか

2025年、SNSをきっかけにした投資詐欺(SNS型投資詐欺)は9,523件・1,288.0億円(警察庁 確定値。前年比 件数 +48.5%・被害額 +47.9%)。入口はバナー等の広告 3,785件とダイレクトメッセージ 3,549件で、全体の約8割でした。

警察庁・金融庁・国民生活センターの資料と、国の「総合対策」をもとに、手口の流れ、増え方、振り込む前に誰でも確かめられることをたどります。

この事件でわかること

  • SNS型投資詐欺とは(警察庁の数え方と、よくある流れ)
  • 2025年の数字:9,523件・1,288億円
  • 広告の言葉(「必ずもうかる」「元本が保証される」)
  • もう1つの入口、ダイレクトメッセージ
  • 国の対策と、振り込む前に確かめられること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 「必ずもうかる」「元本が保証される」という言葉を見たら、それ自体を、立ち止まるサインにすることです。正規の業者が、そういう言い方をしないのは、法律で決められているからです。 言わないはずの言葉を聞いたら、相手を疑う理由になります。
  2. 有名人が出ていても、それだけで本物とは考えないことです。気になったら、その人の公式のページや、所属する会社の発表を見てみることです。 国民生活センターも、まずそこを確認するよう、すすめています。
  3. お金を振り込む前に、相手の登録を、金融庁の一覧で確かめることです。相手が名乗った会社の名前が、一覧にあるか。名前が似ているだけの、別の会社ではないか。そこまで見ることです。
  4. 向こうから届いた投資の話は、一度、家族や相談窓口に話してみることです。家族に話すのは、反対されるためではありません。自分だけでは見えない点に、気づいてもらうためです。 金融庁は、AIといった言葉を使って誘い、投資の勧誘につなげる例も紹介しています。

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出典(主なもの)
事件簿 #007世界の事件・人物2018

1日で84%──VIXショック(2018)、1つの「夕方の買い直し」で何が起きたか

2018年2月5日、アメリカ東部時間の午後4時8分。わずか1分間に VIX先物が11万5,862枚取引されました(市場全体の約4分の1・BIS)。「値動きが小さいほど値上がりする」商品の1つ XIV は84%値下がりし、翌日、東証の ETN(2049)も上場廃止が決まりました。

国際決済銀行(BIS)の分析、発行体・東京証券取引所の発表、CBOE の VIX のデータをもとに、商品が毎日行う「夕方の買い直し」のしくみと、その1分間に何が起きたかをたどります。

この事件でわかること

  • VIX(恐怖指数)と、静かだった2017年
  • 2倍・反対向きの商品の「毎日の買い直し」
  • 2月5日 16時08分の1分間
  • XIV の早期償還と東証 2049 の上場廃止
  • BIS が残した警告と、私たちが確かめられること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 持っている商品が、毎日、何を、いつ、自動で売り買いしているのかを、説明書で確かめることです。ETNやETFの説明書は、取引所や発行する会社のホームページで読めます。 「毎日」「指数の何倍」という言葉があれば、毎日、持つ量を合わせ直している商品だと考えられます。
  2. 「早期償還」や「繰上償還」など、商品が終わる条件を、先に読んでおくことです。値段が戻るのを待てない場合があります。 その言葉の近くに、どんな条件が書かれているか。
  3. 「静かな相場で稼ぐ」しくみは、静けさが崩れた日に、まとめて失う形になりやすい、と知っておくことです。毎日少しずつ増えるグラフは、安心して見えます。 でも、そのグラフが、何が起きたら止まるのかは、グラフの形からは分かりません。
  4. 信用取引で持つなら、商品が終わったとき、担保や返済の予定も一緒に動くことがある、と知っておくことです。東証が2049を担保から外したように、1つの商品の終わりが、口座全体に広がることがあるのです。 どれも、商品の良し悪しの話ではありません。しくみを知ってから持つ、という確認です。

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出典(主なもの)
事件簿 #008個人向け自動売買の流れ2019

豪ドル円 約7%安──円のフラッシュクラッシュ(2019)、正月の朝の30秒で何が起きたか

2019年1月3日、日本時間の朝7時36分。お正月休みの最中、目立ったニュースが無い中で、円はおよそ30秒でドルに対して3%上がり、続く2分ほどで豪ドルは円に対して約7%下げました(オーストラリア準備銀行 RBA)。

RBA の分析、ロイター・ブルームバーグの当日の報道、ニューヨーク連銀・BIS の資料をもとに、「自動の損切り」が同じ数分に重なったしくみと、静かな時間に何が起きたかをたどります。

この事件でわかること

  • 静かなお正月の市場と、日本の個人のキャリートレード
  • 自動の損切りは「値段の約束」ではない
  • 7時36分からの数分間
  • 数分で戻った値段と、戻らない口座
  • くり返す数分の急変と、私たちが確かめられること

私たちが学べること(チェックリスト)

  1. 損切りは「この値段で売れる」約束ではなく、「この値段に来たら売りに出す」予約だと、知っておくことです。業者によっては、悪い値段では成立させない、という指定ができる注文もあります。 ただし、その場合は、売れないまま損が広がることもあります。どちらにも、表と裏があります。
  2. 休みの日や早朝など、参加者が少ない時間があることを知り、その時間に、どれくらいの持ち高を抱えているかを確かめておくことです。カレンダーで、日本の祝日、年末年始、海外の休みを確かめ、持ち高を小さくしておくかどうかを、前もって決めておきます。
  3. 自分の損切りの値段が、きりのいい数字のすぐそばなど、多くの人と同じ場所になっていないかを見直すことです。80円や100円のような、きりのいい数字のすぐそばは、多くの人の損切りが集まりやすいと言われる場所です。
  4. 最悪の値段で閉じられたとしても、口座や生活がもつかどうか。上限を決めておくことです。最悪の値段は、自分の損切りの値段より、ずっと先かもしれない。 その前提で、口座に置くお金と、取引の大きさを決めておく。それだけで、守れるものがあります。

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出典(主なもの)